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理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター RIKEN Center for Life Science Technologies

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研究成果

第2世代高温超伝導ワイヤを使用したNMR磁石の開発に世界で初めて成功

 
 

理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(渡辺恭良センター長) 構造・合成生物学部門(白水美香子部門長)NMR施設(前田秀明施設長)の柳澤吉紀基礎科学特別研究員らは、世界で初めて第2世代高温超伝導ワイヤ(レアアース系)を用いたNMR磁石を開発しタンパク質のNMR信号を取得することに成功しました。この研究は、(独)物質・材料研究機構、千葉大学大学院工学研究科、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー(株)、(株)JEOL RESONANCEと共同で進めている科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業(戦略的イノベーション創出推進プログラム)により行われました。

これまでのNMR磁石は、液体ヘリウム(-269℃)温度で利用する低温超伝導ワイヤを用いて製作されていましたが、1ギガヘルツ(23.5テスラ)が磁場の限界で、さらに磁石が巨大になる欠点を持っていました。近年になり、液体窒素(-196℃)温度でも使用できる高温超伝導ワイヤが市販化され、新たな磁石の開発が世界的に進んでいます。高温超伝導ワイヤには、第1世代のビスマス系ワイヤと第2世代のレアアース系ワイヤがありますが、機械的にきわめて強靭な第2世代のワイヤを利用すれば、NMR磁石の高磁場化とコンパクト化を実現できます。しかしながら、理研を中心とした最近の研究により、このワイヤを磁石(コイル)に巻くと次のような2つの問題が生じることが明らかになりました。(1) 多層構造を持つ第2世代の高温超伝導ワイヤを冷やすとワイヤが損傷し、超伝導特性の劣化が生じます。(2)磁石に電流を流すと、ワイヤに磁場を遮蔽する電流が生じ、精度の良い磁場を作ることが難しくなります。共同研究グループは、これらの困難を克服して、第2世代高温超伝導ワイヤを使用したNMR磁石の開発に世界で初めて成功し(右図)、タンパク質の2次元NMR測定が可能であることを実証しました。

世界初の第2世代高温超伝導NMR磁石

本成果は、従来よりも圧倒的にコンパクトでありながら1ギガヘルツを超える超高磁場を発生するNMR磁石の実現にむけた世界的な一歩です。研究グループは、ワイヤそのものをコンパクトにする技術にも取り組んでおり(http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130812_1)、今後も目標に向けた技術の開発を進めていきます。

本研究成果はオランダの科学雑誌『Journal of Magnetic Resonance』に掲載されました。

原論文情報:

1

Operation of a 400 MHz NMR magnet using a (RE:Rare Earth)Ba2Cu3O7-x high-temperature superconducting coil: Towards an ultra-compact super-high field NMR spectrometer operated beyond 1 GHz.

Yanagisawa Y, Piao R, Iguchi S, Nakagome H, Takao T, Kominato K, Hamada M, Matsumoto S, Suematsu H, Jin X, Takahashi M, Yamazaki T, Maeda H.
J Magn Reson, 249, 38–48 (2014).

関連研究室

CLSTは、2018年4月1日からの理化学研究所第4期中期計画により、3つのセンターに改組されました。