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研究成果

2 種類の高温超伝導ワイヤを組み合わせて超伝導磁石の世界最高記録を達成

理化学研究所、物質・材料研究機構、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社、株式会社JEOL RESONANCE、千葉大学からなる共同研究グループは、2種類の高温超伝導ワイヤを組み合わせた高温超伝導コイルと低温超伝導コイルを併用した新タイプの超伝導磁石を開発し、現時点で超伝導磁石の世界最高記録となる、27.6テスラの定常磁場の発生に成功しました(2016年4月1日現在)。

これにより、共同研究グループが開発を目指す高磁場でありながらコンパクトなNMR装置の実現に一歩近づきました。本開発は、科学技術振興機構の研究成果展開事業・戦略的イノベーション創出推進プログラムによって実施されました。

コイル線材としてのビスマス系やレアアース系の高温超伝導ワイヤは、従来の金属系低温超伝導ワイヤでは到達できない超高磁場を小型のコイルで発生させるポテンシャルを持ちます。この特性を活かし、金属系低温超伝導コイルの限界であった23.5 テスラ(水素核の核磁気共鳴周波数にして1ギガヘルツ)を上回る超高磁場NMR装置の開発が望まれています。昨年、本共同研究グループのメンバーも参加し、ビスマス系高温超伝導コイルと低温超伝導コイルの組み合わせにより、1.02ギガヘルツ(24テスラ)の世界最高磁場NMRの開発に成功しています[1]

 

今回共同研究グループは、高温超伝導コイル部分にビスマス系とレアアース系の2種類の高温超伝導ワイヤを併用する新しいアプローチを試みました(右図)。この方式は、それぞれのワイヤの物理的な特性を最大限活かして高磁場を効率よく発生させるものです。この実現のカギとなったのは、

  1. 高強度ビスマス系ワイヤによる応力耐性が高いコイルと、
  2. ワイヤの剥がれによる特性劣化を抑制したレアアース系ワイヤのコイル、

の2つの要素技術の開発です。

 

 
図)27.6テスラの定常磁場発生に成功した超伝導磁石

このビスマス系・レアアース系併用高温超伝導コイルを、物質・材料研究機構強磁場ステーションの17テスラの大口径低温超伝導コイルの中に設置しました(図参照)。まず低温超伝導コイルを、つぎに高温超伝導コイルを励磁した結果、ホール素子で計測された磁場は最終的に27.6テスラの定常値に到達し、韓国のグループ[2]の26.4テスラ、米国のグループ[3]の27.0テスラを上回る世界最高磁場を実現しました。

共同研究グループでは最近、レアアース系ワイヤを用いた中磁場のNMR磁石において、タンパク質試料の高分解能NMR測定に成功しています[4]。この技術と、今回開発した高磁場発生技術をさらに発展させることで、世界中で基盤研究開発が進められている1.2ギガヘルツさらには1.3ギガヘルツのNMR開発へ大きく近づきました。

<参考文献>

[1]  世界最高磁場※のNMR装置(1020MHz)の開発に成功 
[2]  26 T 35 mm all-GdBa2Cu3O7–x multi-width no-insulation superconducting magnet, Sangwon Yoon, Jaemin Kim, Hunju Lee, Seungyong Hahn and Seung-Hyun Moon, Superconductor Science and Technology, 29(4) (2016) 
[3]  ・NHMFL homepage: MagLab claims record with novel superconducting magnet  
    ・H. Weijers et. al., Progress in the Development and Construction of a 32-T Superconducting Magnet, IEEE Trans.   Appl. Supercond., 26, 4300807 (2016) 

[4]    コンパクト超高磁場NMRの実現へ-レアアース系高温超伝導ワイヤを使用したNMR装置を開発-

 

 

関連研究室

CLSTは、2018年4月1日からの理化学研究所第4期中期計画により、3つのセンターに改組されました。